海の仙人

福田和也研究会

学籍番号:71447032 環境情報学部 2年 原 理奈

 

人はいつでも孤独を感じる。たとえ家族や沢山の友達に囲まれていたとしても。孤独を嫌って一人でいるのを避ける人もいれば、反対に孤独を好んで一人でいることに居心地の良さを感じる人もいる。この作品の主人公である河野勝男は後者に近いだろう。そして、他に登場する2人の女性も同様だ。

勝男は宝くじに当選したことをきっかけに、敦賀半島に移り住んで仙人のような生活を送ることになった。そこには家族も昔馴染みの友達もいない。そして、ある日ファンタジーと名乗る神さまに出会う。ファンタジーは願いを叶えてくれるような神さまではない。外国人の見た目をした役に立たない神さまだ。しかし、私にはファンタジーが役に立たないとは思えなかった。

ファンタジーと一緒に住み始めてから、勝男は一人の女性、かりんと出会う。かりんはハードワーカーではあったが、時たま勝男に会いに敦賀に来るようになった。かりんもまた、孤独な人間だ。仕事が生きがいで、それ以外は何もないように見えた。がんでホスピスに入院した時でさえ、家族が面会に来たのはただの一度きり。かりんはそのことを気にしていないかもしれないが、きっと孤独を感じていたはずだ。

もう一人の孤独な女性、勝男の元同僚の片桐は自分が孤独であることを自覚している。勝男への実らない思いを胸の中に隠し、強気で振舞う。

そんな孤独な3人はファンタジーとの遭遇によってどう変わったのだろうか。河野はかりんと出会って、ほんの少しの間空想のような幸せを手にいれた。かりんは最期まで愛する勝男が側にいてくれた。片桐は自分の気持ちに素直になって、8年も会ってなかった勝男にもう一度会いに行く。ファンタジーは孤独な3人に、愛や幸せや勇気を届けてくれた。決して役立たずではない。私のところにもいつかファンタジーが訪れる日は来るのだろうか。

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