海街diary
フランス映画みたいだと思った。穏やかで美しい鎌倉の海の景色と緩やかな音楽のオープニングから、観る人を優しさと温かさで包む、いかにも、是枝監督らしい作品だった。
レディースデーの夜の映画館に、一人でプレモル2杯を買い込んで鑑賞した私は、酒気帯びも関係しているとは思うけれど、終始号泣していた。涙が映画の良し悪しを判断する物差しになるとは思わないけれど、少なくとも私は映画にカタルシス要素を求める世間一般で言うメンヘラタイプのメスなので、鑑賞後はとにかくスッキリしていたし、満足感と幸福感で満たされていた。というのも、自称(他称?)メンヘラの私が共感せずにはいられないのが、3人姉妹だけで鎌倉に住む彼女たちの元に、父の死を機に腹違いの妹がやってくる、という本作の設定だ。
私には、姉がいて年齢は私の20個上だ。小さい頃から、何度もオトナに尋ねられてきたけれど、もちろん血は半分しか繋がっていない。厳密に言うと、母は未婚のシングルマザーで姉を産んでいるから実質的な父親は一人だとか、今はその父親すらもいないとか、まあ込み入ったフクザツな話をすると四半世紀ぐらい経ってしまうだろうし、他人の身の上話ほどつまらないものってないから、この辺にしておくけれど、そういった事情も込み込みで、とにかく私は姉のことが大好きだ。いわゆるシスコンの部類だって自覚もある。姉は私が生まれた時のことを、「神様が天使をくれたって思ったよ」と恥ずかしげもなく何度も言う。そんな姉の姿を、血の繋がらない妹・すずを引き取り、「すずはここにいていいんだよ」と居間で静かに語りかける長女・香田幸とどこか重ねてしまう。
小さな頃から、家族というコミュニティが限りなく不確かだった私だけれど、本作を観て、血縁なんてひとつのきっかけにすぎなくて、家族は家族になろうとする気持ちさえあれば、そこに血縁なんかよりもずっと強い絆が生まれるものなんだろうなと改めて思って、なんだか無性に姉の声を聴きたくなって電話をかけた。
(フクシマユズノ)