アストラル ・アブノーマル 鈴木さん。
皆さんは『アストラル・アブノーマル鈴木さん』という映画をご存知であろうか。タイトルを直訳すれば、“宇宙的に異端な鈴木さん”というとんでもないインパクトを与えてくれるこの作品を手がけたのは大野大輔監督。彼は1988年千葉県に生まれ育ち、13期フィクションコース初等家庭終了後に映画制作チーム「楽しい時代」を結成した。毎年秋に開催される映画祭TEAM CINEMA FORUM内のTEAM NEW WAVEにおいて大野監督の『ウルフなシッシー』はグランプリに輝き今、注目を集めている映画監督。
この『アストラル・アブノーマル鈴木さん』という映画はもともと昨年の6月に開設されたYoutubeチャンネル「AlphaBoat Stories」の第1弾企画として制作された全17話の同名ドラマを、87分におよぶ「完全ディレクターズカット版」として再構成したコメディー映画であり、松本穂香演じる自称グレートユーチューバーの鈴木ララが群馬県のド田舎を舞台として家族やララを取り巻く周りの人間を巻き込み、暴走を広げる姿を描いたものだ。
今回私自身、この作品からとても衝撃を受けたことが1つある。それは自称グレートユーチューバーの鈴木ララと、東京で女優業をしているララの妹、鈴木リリを松本穂香さんが一人で二役演じている事だ。私は本当に似ている2人をブッキングしているのかと思わせるほどの“ララ”“リリ”の非対称な彼女の演技力に心底驚かされた。まさしく松本穂香さんの魅力が存分に詰まった作品といった感じで、奇抜な役なのに変に浮いていないのが彼女の演技力の高さを象徴していると感じ取れた。恐らく松本さんを主演に抜擢できなければ、この作品の成功は無かったであろう。
作品内にて、ララはなんども「メディアは嘘つく生き物だ!」とか「ユーチューバー舐めてんじゃねえぞ」と連呼していた。メディアには報道の自由がある一方で、その報道の自由が誰かを傷つけてしまう事もある。今現在の報道のあり方を見直す事もまた1つ、これからの日本には必要なのかもしれないとこの作品を見て感じた。