『アストラルアブノーマル鈴木さん』を見て
監督は大野大輔。初の自主製作映画『BAD SAMURAI FOREVER』がコケ、それを自虐した自伝映画『さいなら』を撮る。両作品を合わせた『さいなら、BAD SAMURAI』がカナザワ映画祭2016期待の新人監督賞を受賞。この受賞作と一緒に上映するため製作した『ウルフなシッシ―』では自らも主演し、第18回TAMA NEWWAVEグランプリに選ばれた。
まず『アストラルアブノーマル鈴木さん』という題名に面食うが、公式サイトを読んだところ「宇宙的に異端な鈴木さん」という意味ならしい。「宇宙的に異端」であるにも関わらず、日本に多い名字「鈴木」というところにギャップが感じられ、強欲などの意味を持つ「ウルフ」と「腰抜け」などの意味を持つ「シッシ―」を組み合わせた『ウルフなシッシ―』につながるものを感じた。題名にもユーモアが仕込まれている。
この映画はYoutubeドラマを再編集している。Youtuberを若干皮肉っているようにも見えるこの作品をYoutubeで流すという、ここにもユーモアが。
内容は、群馬の片田舎に住む、自称グレートYoutuberの鈴木ララが特に実力もないが自意識はパンパンに膨らませて周りを巻き込んでいくというもの。有刺鉄線の画から移って、ジャージに眼帯、左手に大きな木製ハンマー、クロックスもどきをつっかけた鈴木ララが道のど真ん中を闊歩するところから始まり、イキった若者感が存分に見て取れる。
主演の松本穂香が鈴木ララとリリを一人二役で演じている、というのも注目の一つだ。同じ見た目でありながら、田舎で卑屈にイキるYoutuberララと東京で女優「一ノ瀬凛子」として成功するリリという正反対の双子。面白いことに、対極にいるように見え、お互いを攻撃する二人だが、どちらも正解じゃない感じがするのが、不思議な感覚だった。
最終的に、妹のリリでもないバイト先の生徒の圧倒的な才能に、自分の不可能を思い知らされ、等身大の自分を認識するララ。自分自身を見つめて地に足つけろ、と言われているような気がして、就活生には刺さるものがあった。