石原慎太郎が絶賛した男
橋本徹大阪市長が提案した大阪都構想は、反対70万5585票、賛成69万4844票という僅差で否決された。この僅差こそが、普段政治に関心がない多くの国民を惹きつけ、政治って面白いと少しでも可能性を指し示してくれた事実だけは否定できないだろう。ここまでの大接戦に持ち込める人物は、橋本徹という人物以外、他では考えられなかったはずだ。いい意味でも悪い意味でも、人からの注目の集め方がずばぬけてうまかった。「あんなに演説のうまい人をみたことがない。言葉の調子は違うが、田中角栄だね。若いときの。それから例がよくないかもしれないけど、彼の演説のうまさ、迫力というのは若い時のヒトラーですよ。ヒトラーは後にバカなことをしたが」ここまで石原慎太郎氏に絶賛されている政治家を自分は見たことがない。それほど橋本徹という人物には、高い政治的手腕をもったカリスマ政治家であったことが伺える。
しかし、そんな橋本徹でも実現できなかったのが大阪都構想である。大阪都構想とは、ひとことで言えば、「大阪市をなくした5 つの区にわける」といったものだ。ここまで大きな改革が、明治維新以来なかったため、その変化の大きさを脅威と感じてしまう人がいるのはしょうがないことかもしれない。しかし、脅威=否定といった安易な考え方しかできなかった有権者は、今後の大阪、さらには日本にとって悪以外なにもでもない。たしかに、大阪都構想が実現したことによって引き起こるメリットとデメリットを整理して客観的に考えるのは難しいことかもしれない。しかし、そこで思考をとめるのではなく、より将来的に価値を生み出せるのはどちらかなのかを最後まで考えてほしかった。ここで私が言いたいのは、否定すること否定しているのではなく、否定した場合、今後どのような対策を代替案としてもちいるべきかまで議論してほしかった。実際に、大阪都構想に反対していた自民党や民主党や共産党は「対案」をもっていなかったにも関わらず、漠然と変化を恐れた有権者や既存の既得権益へ甘んじている有権者によって、大阪市を将来のためにどうするかという構造的な改革は歯止めをかけられてしまった。今後、東京に並ぶ大都市である大阪を復活させなければ、日本経済全体がますます東京一極構造に陥ってしまう。いかにして、悪しき有権者を減らし、構造改革に向けて一丸となれるかが、今、大阪府民全員が背負っている課題である。