『ムンク展』
エドヴァルド・ムンクは1863年、ノルウェーで生まれた。5歳に母、9年後に姉を結核で亡くす。17歳で王立美術学校に入学し、その間、ハンス・イェーゲルを中心とするボヘミアングループや、文学者、芸術家と交流を深め、刺激を受ける。20歳で初出展、26歳には初個展を開く。29歳にベルリンで行った個展では批判を受け、1週間で打ち切りに追い込まれる。33歳からは版画、39歳ではカメラを使用するように。56歳に交響曲のように響きあう愛と死をテーマとした『生命のフリーズ』を発表。74歳、ナチスが絵画を押収し、77歳には母国を占領。終戦前に80歳でこの世を去った。ムンクは神経症とアルコール依存症に長く悩まされており、死を感じさせるムンクの作品にその影響が見える。
代表作『叫び』に際してのムンクの日記が印象的だ。
「…そして見たのだ、燃えるような雲が群青色をしたフィヨルドと街の上に、血のように剣のようにかかっているのを。私は恐怖におののいてその場に立ちすくんだ。そして聞いた。大きな、はてしない叫びが自然をつらぬいてゆくのを」
病気で入院したのが29歳で、『叫び』を制作したのが30歳なのを考えても、この時ムンクの感じたもの、そして『叫び』という作品にその二つの病が大きく関わっているのは間違いない。
そんな『叫び』が初来日。東京都美術館の『ムンク展』にはだいたい20代以上の男女が見に来ていた。先日訪れたフェルメール展が大学生1800円、一般が2500円だったのに対し、『ムンク展』は大学生1300円、一般も1600円と懐に優しい。何と12月は高校生が入場無料なので、上野公園のパンダでも見ながら訪れることをおすすめしたい。
とここまで作品は『叫び』についてしか書かなかったが、個人的に気に入ったのは『太陽』。海岸に太陽の光が広がる絵なのだが、神が降臨したかのような神々しさで、見た瞬間感銘を受けた。きっとクリスマスのイルミネーションより心を動かされるに違いない。