映画『シンデレラ(ケネス・プラナー)』 〜ヒール役が魅せた「切ない悪」〜
環境情報学部2年 森本 梨沙
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最近すっかり多忙に任せて映画離れしていたが、先日久しぶりに話題作の『シンデレラ』を観てきた。元々ウォールトディズニーアニメーションの『シンデレラ』が作中の「A Dream is a Wish Your Heart Makes」を口ずさんでしまうぐらい好きだったのでとても楽しみにしていた。
全体を観終わって感じたのは、ストーリーを知っているはずなのになぜこれほどはらはらさせられたのだろうという疑問だった。特に継母が舞踏会の夜王子と踊っていた謎の女性の正体を見破り、シンデレラと対峙するシーンは心臓の奥が何かにつかまれたように緊張した。その訳について考察する。
まず1つは、継母がシンデレラとはまた違う美を継母役演じるケイト・ブランシェットが纏っているからではないかと考えた。アニメ『シンデレラ』に登場する継母は気品があっても、いわゆる美人ではない。ある意味観る人全てが「憎い」と思えるようなキャラクターだ。しかし今回の映画『シンデレラ』に登場する継母は誰が観ても気品があり、妖艶で美しい。そこに継母の迫力の秘密があるように思える。
2つ目に、アニメ『シンデレラ』では明かされなかった、継母がシンデレラを憎む理由が明確に示されるからではないかと考えた。あの日王子と会っていた証拠であるガラスの靴を割られ、シンデレラはどんなに酷く接されても優しくあろうと努力してきたのに、どうしてそんなに非道なのかと出て行く継母に泣き叫ぶ。それに対し、継母は思い詰めた顔でこう答える。「それは、あなたがいい子で、純粋で…」全てを言い終わる前に彼女は出て行き、シンデレラを屋根裏部屋に閉じ込めてしまう。この世に純粋な悪人などいないということを、醜くい中の切なさを美しく表現したことがこのシーンに深みを与えたのだ。
継母からの酷い扱いすらも最後には許し幸せになったシンデレラを見て、私たちは結果的にシンデレラのように、誰に対しても優しくあろう、勇気を持とうというメッセージを素直に受け取ることができるのではないだろうか。継母は物語のメッセージを伝える上で非常に重要な役割を果たしていた。