昭和の怪物

1939年12月に北海道札幌市で教員の父親の元に彼は生まれ、同志社大学文学部を卒業後に編集者などを経てノンフィクション作家となる。また、第二次世界大戦当時の日本国軍部には極めて批判的で、“大東亜戦争は自衛の戦争”と主張する靖国神社にも否定的である。それが“保阪正康”だ。

そんな批判的な意見を持つ彼が書く“昭和の怪物 七つの謎”は私にとってとても面白かった。保阪正康氏は「昭和前期から無謀な戦争に突入し、悲惨な敗戦を迎えるまでの記録と教訓を、次世代に繋げることが大切である」と言う。そして彼がリアルな昭和の日本国軍部を描けたのは、これまで40年以上にわたる近現代史研究で、のべ4000人以上から貴重な証言を得てきた経験からなのでは無いであろうか。

本作の内容としては戦前から終戦を迎える時期を中心に昭和の歴史に登場する6人、東條英機、石原莞爾、犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三、吉田茂の人物について、保阪正康氏が戦後に本人や本人をよく知る関係者に取材した内容を基に、その実像(昭和の闇)を探った本である。 そして今回本作を読んでみて“面白い”と感じられたのは、きっと自分が思い描いていたそれぞれの人物像とはまったく違った表情をこの本からうかがえたからだ。日本が第二次世界大戦へと突き進む中で、自らの信念を貫き続けた人、歴史の表舞台から去ったり不幸な経験を余儀なくされた人、戦後復活を果たした人、とそれぞれの立場は異なるが、これらの歴史を全体として見ると、戦前の軍部を中心とした異常な社会の実像が見えてくるような気がした。

しかし、それらの歴史が今の平成を構築している事は事実であり、“歴史”をただ単に“過去に起きた物語”と考えるのではなく、将来を創造していくにあってとても重要な資料と考える事が大切なのだ。

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