『昭和の怪物 七つの謎』を読んで

著者、保阪正康は19391214日生まれ。ドイツがポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が始まる約3か月後に生を受けた。その戦争、昭和史を中心に研究しているようで、現代史研究家、またノンフィクション作家として活動している。2004年は『昭和史講座』で菊池寛賞、2017年は『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。「これまで延べ4000人から証言を得て」おり、インタビューを重要視していることがわかる。

 この書の中でもそれは強く感じられ、インタビューを生かして各章が書かれていた。この本では、各7章で1人に焦点を置き、その人物に関する謎を関係者からの証言を基に紐解いている。1章は東條英機。だが私はこの1章を読んで、何か消化しきれないようなものを感じた。次章の『東條には思想も意見もない。私は若干の意見も持っていた。意見のない者との間に対立があるわけはない』という言葉ですっきりした。1章で見せられた東條英機の愚かさがこの石原莞爾の毒舌によって、わかりやすく頭に入ってきたのだ。東條英機という人物を見ていくにあたり、石原莞爾という人物からの視点は不可欠であり、それと同時に、石原莞爾という人物を知るにも東條英機についてまず知ることが重要なのだと感じられた。この2人は同じ時代を生き、同じ問題に関して全く違う方向性を見せた2人。比較することで、2人の違いと、その違いがいかに重要で問題だったかがわかる。

 あとがきにも少し述べられていたが、平成が幕を閉じようとしている今、この本が発行され、歴史の反省を学べ、という意志がひしひし伝わってくる。1章で、選んではならない首相像として『精神論が好き』『妥協は敗北』『事実誤認は当たり前』『自省がない』を挙げており、東條英機はこれに当てはまった、ということだった。若干レッテル貼りのようなものにも感じられるが、反省を生かしていく、という意味では有用かもしれない。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です