1280円のご褒美

 私が戸塚のアフタヌーンティーに行くのはいつもバイトの休憩中だ。長時間働かないと休憩がもらえないので、そのご褒美としてひと時のティータイムを楽しむのが私のお気に入り。だがここのメニューは、ポットで出てくるとはいえ紅茶が720円、決して安くない。いつも懐具合と相談しながら3階へ臨む。アフタヌーンティー戸塚店はいつもがらがらで、高校生で溢れる1階のマクドナルドの賑わい具合とはえらい違いだ。おかげで日当たりの良い、窓側のソファー席に座れる。

 私の頼むメニューは毎回同じ、1280円のクリームティーセットだ。内容はスコーン2個とドリンク。スコーンの1個は季節限定の味にできるが、私はプレーン2個とホットのアフタヌーンティーにミルクをつけてもらう。

 セットが運ばれてくると、店員がこぽこぽと音を立てて紅茶を注いでくれる。それを見届けた私は、まずストレートで紅茶を一口飲み、スコーンを口へ運ぶ。あたたかくバターが香るスコーンのファーストタッチはかりっとした表面。口を閉じていくとともに今度はふわっとした柔らかな生地。そこにはスコーンの特徴であり最大の難点でもある、生地のぽそぽそ感、少し乾いた感じが一切ない。程よくしっとりした生地が口の中に広がる感動で時を忘れる。

 しかしここで感極まっている場合ではない。スコーンにはホイップクリームとブルーベリーのジャムがついてくる。ホイップクリームにありがちなしつこさが排除されたこのさっぱり感。さわやかなクリームと、甘みの中に酸味もあるジャムの絶妙な組み合わせ。この2つと出会って初めて、アフタヌーンティーのスコーンは完成形を迎える。

 スコーンが食べ終わり、ミルクを入れて紅茶を飲み進める。ほっと一息を吐くのも束の間。ああ、飲み終わってしまう。バイトに行かないといけない、仕方なく席を立つ。この場から離れ難いのに、不思議なくらいの満足感。自分へのご褒美はやっぱりこのティータイムに限る。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です