無限の玄

3年 青木輝

コラム課題 無限の玄

 

「もし生き返ったら何をしよう」

誰しもが今まで生きてきた中で1度は想った事があると思うが、この“無限の玄”という作品はまさにそんな妄想をさらにかきたてるような作品であった。この小説の作者である古谷田奈月さんは今小説界でも注目されている一人であり、5月に”無限の玄”で第31回三島由紀夫賞を受賞し、”風下の朱”が第159回芥川龍之介賞候補作になった。”無限の玄”においての登場人物は男性のみ、そして”風下の朱”においては女性のみ。そんな奇抜なアイデアをしてしまうあたりもオモシロイ。

「月野夜で死んだ」という冒頭の一文からいかにもこの後に何か起こるであろう雰囲気をかもし出しているこの小説は、宮嶋家の5人(死んでは蘇る玄・玄の弟の喬・玄の息子達の律と桂・玄の甥の千尋)によって構成されている。桂の祖父はカントリーミュージックに似た音楽を奏でるブルーグラスバンドの創始者であり玄は環の死後、バンドのリーダーとなる。そして玄は、玄の甥の千尋をバンドに加入させ親子の関係を断ち切らせただけでなく、その命まで奪い取っていく。玄とは一体何者なのであろうか。毎日玄の死体を引き取っていく刑事本田の存在も不可解。最初こそ不信感をあらわに接するが、やがて家族の一員のように親しくなる。ファンタジーなのか、ホラーなのか、この謎が謎を深めていく幻想の世界になぜか引き込まれていった私。

生と死については様々な意見があるこの世の中だが私は、人が死を恐れるのは、それだけ生に愛を注いでいるのでいるからだと思っている。だから玄が月野夜で死んだあの日あの時から、本当の意味で彼が死んでしまった時であると私は想った。

まぁ、こんな考え方は空想物語には無意味であるが。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です