ミケランジェロと理想の身体
「ミケランジェロと理想の身体」
総合4年 長内あや愛(おさない あやめ)
「ミケランジェロと理想の身体」展と題し、”「神のごとき」と称された史上最高の芸術家—天才の生み出した傑作—奇跡の初来日—”というキャッチコピーをつけた、かの有名なミケランジェロの展覧会が、国立西洋美術館で6月19日から9月24日まで開催されている。
なにが「奇跡の初来日」なのか。今回の展覧会の目玉は、ミケランジェロ初期の傑作「若き洗礼者ヨハネ」と壮年期の傑作「ダヴィデ=アポロ」の2つ。一時同じ所有者だったこの2つの代表作が、500年の時を経て、日本初来日で再会を果たす…「奇跡の初来日」となっている。
「みどころは?」と聞かれたら、同じくこの2つの作品になる。「若き洗礼者ヨハネ」は、ミケランジェロが世界に名を知らしめる数年前、約20歳の頃の作品といわれ、早くも古代美にたどりついたところが高い価値として認められている点である。スペイン内戦で大きな被害を受けたが修復された。頭部が修復された部分と現存の部分で石の色が違っていて、仮面のように見えることが、さらに印象深い。「ダヴィデ=アポロ」は、50歳半ばで辿り着いた美の境地の傑作と言われ、作品が”未完”であることが、さらに価値を高めている。背中に背負っている大理石が、まだノミの削り跡を残して完成されていなく、聖書の英雄ダヴィデかギリシャの神アポロか、どちらを作ったのか、未だに謎に包まれているのだ。それゆえに、「ダヴィデ=アポロ」と呼ばれる。
展示室に入ると、平面の壁に立体的な彫刻が飾られている。生き生きと生々しい石が目に焼き付いて、どの作品も目を離せないほどに、リアル。最後の最後で、目玉作品2つが横並びに展示され、この展覧会は幕を閉じる。
大理石を削って出来上がったその作品は、人間そのものと見間違えるほど精密であるが、同時に無機質で崇高な存在でもある。私たち自身人間の愚かさも醜さも含めた愛着と、星や神など神聖なものを崇めずには信仰心の共存が、彫刻の表すところで、昔も今も変わらないのかもしれないと思った。