ミケランジェロと理想の体
ミケランジェロと聞くと僕の周りではソシャゲのキャラクターを思い浮かべる方が多いだろう。中にはミケランジェロは可愛い女の子だと信じているやつもいるはずだ。僕もそんな奴らの一人だった。同じ時代を生きたレオナルドダヴィンチの方が有名すぎて、ミケランジェロのことはほとんど知らない。
タリア・ルネサンスの巨匠ミケランジェロ・ブオナローティ(1475‐1564)は、彫刻、絵画、建築という視覚芸術の3つの領域において、他の追随をゆるさぬ卓越した人体表現と深い精神性を示した。人々は彼を「神のごときミケランジェロ」と称えた。
ダヴィデ像に代表されるような、石の塊のなかから彫り出された完璧なまでの造形、そしてヴァチカン宮殿のなかのシスティーナ礼拝堂に描いた史上最大の天井画は、まさに超人技といえるだろう。本展ではカーサ・ブオナローティの所蔵する作品を中心に、ミケランジェロ本人による真筆の素描および書簡約35点を含めた作品およそ70点を展観されている。
中でも今回の目玉は<ダヴィデ=アポロ>だろう。聖書の英雄ダヴィデか、ギリシャの神アポロか。未完ゆえに作品の主題でさえ謎に包まれ、同時に、表面を滑らかに仕上げずに残されたノミ跡がミケランジェロの生々しい制作過程を伝えていた。20代の傑作「ダヴィデ像」しか知らなかった僕にとってとても衝撃的だった。「ダビデ像」と比べて背は低く、あまり筋肉質とは言えない。しかし表情から体の曲線具合が官能的な雰囲気を漂わせている。そこには今も解明できない謎があり謎がこの作品の魅力を際立たせていると感じた。
今まで学校の美術室にあるの彫刻と美術館にある彫刻の違いは分からない人は多いだろう。しかし、この「ミケランジェロと理想の身体」に行けば、ミケランジェロの手掛けた彫刻と美術部が遊びで作ったものの違いは見極めれるようになるはずだ。それくらい「神のごときミケランジェロ」の作品は凄まじい。