大傑作!「万引き家族」
言わずと知れた本年度カンヌ国際映画祭コンペティション部門最高賞であるパルム・ドール受賞作である是枝裕和監督作品「万引き家族」。審査員長ケイト・ブランシェットが「無視されたきた人々に声を与えた」と称した今年のコンペ作品群。まさに本作はそういったテーマの中で生み出された大傑作である。
万引きをする事で生活している家族が、虐待を受けた少女を迎え入れる事から物語は始まる。ど底辺の暮らしの中でも、幸せで溢れていた。しかし、ある事がきっかけで家族は離散し、それぞれの過去が明らかになってゆく。
マイルドだけどどこか「凶悪」に通づるワルさを感じるリリー・フランキー。愛おしいメンヘラ松岡茉優。本当に死にかけの樹木希林。爛れたエロさでついついボッキしてしまう安藤サクラ。そして是枝映画は子役がスゴイ!城桧吏、佐々木みゆ。各々魅力的なだけではなく、本当の家族のようだった。しかしどこか無責任、という絶妙なニュアンスもバッチリ描かれている。
この作品のテーマは大きく2つあって、ひとつは、社会という制度の中でははめ込む事ができない、そして認めてもらえない在り方が存在するという事。人の在り方に対して社会という制度は不十分なのかもしれないとさえ思わされる。映画の中で、ニュースや警察は彼らの在り方を微塵も汲み取る事ができておらず、少し悲しくなってしまう。そう思わされるだけ「無視されてきた人々」がよく撮れているのだ。
もうひとつは、大人が成長しない間に、子供は成長しているという事。子供達の成長に取り残されていく大人の姿は、どこか可哀想だった。子供は大人を無視して未来を生きていく、そんな風にもとれるかもしれない。
社会派作品をこれだけの深度で撮りきる是枝監督の手腕は、ドキュメンタリー番組のディレクター時代に鍛えたものに違いない。被写体との距離感が抜群に上手いのだ。
だから是枝裕和という人間は、きっととても冷たい人なんだろうな、と思ってしまう。