お金の若者離れ
若者が消費を控えていると言われて久しい。特に、車、酒などに顕著だ。例えば、消費者庁が作成したデータによると、1999年と2014年を比べた時、月あたりの自動車関連費は、単身30歳未満男性で18,814円から7,351円と半分以下に落ち込んでいる。もちろん、個別品目に限らず、全体としても、若者の消費は落ち込んだ。1984年と2014年を比較した際、29歳以下の若者のみ、平均消費性向が20%以上も落ちている。
これらの原因に関して、最近ある大学生が投書をして、話題になった。彼曰く、お金が若者から離れていることが問題らしい。給料が低いのに、将来のために貯金しなければならない。だから、消費などできないと彼は言う。
そこで、事実関係を確認しておくと、まず所得水準は変わっていない。内閣府の統計によると、1991年から2012年で、一人当たり雇用者報酬は横ばいだ。一方で、デフレと言われるように、消費者物価指数は明らかに減少傾向にある。これらから言えることは、若者の実質的な給料は落ちていないということだ。そうなると、問題の根源は、彼らのお金の使い方が貯金へと向かっている点だ。
投書を書いた大学生によると、貯金をする理由は、将来への不安にある。だからこそ、離れていくだろうお金にしがみつく若者の姿がある。これは意識の問題で、「現状が変わらないから、将来的に困窮する。」という前提に端を発する。
僕はこの態度が今の若者の問題だと思う。そこには、社会に対する受動的な態度がある。若者の政治意識の低さはこれを裏付けている。彼らは社会を所与のものと考えており、その中で個人的な生活を楽しもうとしている。また、彼らの自信のなさも浮き彫りになる。将来的に収入を上げられる才能があると考えれば、貯金はほどほどに消費をするだろう。60年代の学生運動が健全な若者の姿に思える。彼らは、自分たちに自信を持ち、社会を変えようと行動した。
投書によれば、若者は旅行したいらしい。そういう欲求があるならば、貯蓄が必要ないような社会を作れば良いじゃん。自分に投資でもして、給料をあげれば良いじゃん。自分も社会も変えようとしないで、なすがままな若者に警笛です。
参考:内閣府「国民経済計算」、総務省「消費者物価指数」、朝日新聞