ラブレス

エロくない、日常の中の裸と不倫セックスがつらつらと映し出される。どうにもセクシーさに欠ける。本当なら背徳感にゾクゾク来そうなシチュエーションなのに。キスの音も「チュッ」の後に「コポッ」と鳴るリアルさ。また、車内での夫婦喧嘩で夫が繰り出す技もみみっちい。
そんな風にして、離婚寸前の倦怠期夫婦の喧嘩とそれぞれの不倫が厭な程地味でリアルに描かれる。そしてそれが引き金で起きる息子の失踪が物語のメインとなるのだが、捜索中も夫婦はそれぞれ懲りずに絶賛不倫中。えらく空気が冷え切っており、つくづく胸糞悪いシーンが続く。しかしながら、そんな厭な夫婦が自分の中にも住んでいそうでさらにゾッとする。一体この映画はなんなんだ!?
テーマとしているのは「親から子へのネグレクト」という、これといって珍しいものでもないのだけれど、徹底したリアリズムに溢れた、カメラの冷たい眼差しを介して描かれる事で、これまでにないくらい、じわじわと観る者の心と忍耐力を試してくる。淡々と、無表情でボディーブローをキメてくる、得体の知れないボクサー、もしくは少林寺木人拳と戦っているような気分にさえなる。
そしてこの映画の極め付けにキツい所は、失踪事件に対してみんなが期待するようなドラマ的な解決の展開が用意されていない事である。映画が後半に差し掛かり、その事に薄々勘付く。そして案の定、最後まで救いの手は差し伸べられない。観ている映画が最後まで何も起きないのは、観客としても辛いし、退屈である。まさに、罪を背負い続ける宿命に生き続けなければならない劇中の夫婦の気持ちと上手くリンクして、肩が重くなってくる。そしてラストカットで、「もう状況は何も変わることはないんだけどな!」と宣言されてしまう。そのままエンドロール。何も変わらないという事は・・・あの夫婦も懲りずに不倫相手と傷の舐め合いみたいなセックスを続けるのか!となんだか絶望的な気持ちになった。

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