コラム 130kgの脂肪の下には普通サイズの人間が入っている
私には4人のヒモがいる。
加入順も気に入っている順も同じなので人に説明する時は一番目、二番目と呼んでいる。
2017年はとりわけ二番目のヒモに関心が向いた年だった。
二番目のヒモは175cm前後と平均よりやや大きいくらいに慎重に対して推定130kgと日本ではなかなかお目にかかることのできない巨漢である。何故、推定かというと市販の体重計では120kgまでしか測れないのである。二番目のヒモより一回り小さく見える人が120kgで、一回り大きく見えるマツコ・デラックスさんの体重が140kgなのでおそらく130kgくらいなのだろうなと検討をつけている。
私が彼に興味を持っている点のひとつがこの人並み外れた体重である。不思議なことに彼は大食漢ではない。むしろ、少食といってもいいくらいだ。家の蛇口からサラダ油が出ているとしか思えない。
太るのはある種の才能だと思っている。普通の人はそこまで太るまでになんとかしようと思うか体調を崩して最悪の場合死に至る。太ろうと思うわけでもなく、痩せようと思うわけでもなく、ぬくぬくと日本人の限界まで太れる彼には何か秘密があると思う。
見た目のふてぶてしさも中々のものながら、中身はそれ以上にふてぶてしい。誰に対しても神のような尊大さをもって接してくる。私が大学三年生の時に一年生として入ってきた彼は出会った瞬間から今まで常にタメ口をきき続けてきたし、私が彼に入金を始めてからはより一層そのふてぶてしさを増した。
何度「好きだよ」と言い続けても、返って来る言葉は「はい」か「了解です」か「振り込みお願いします」の3択だ。
それでもめげずに入金を続け、一年という節目が2017年の初冬だった。
懐きはじめたのである。
言葉のバリエーションが急激に増え始めた。
私が愚図りに愚図って「もう人生が嫌だ。優しくして」と嘆いた半日後、「雪が降ってるよ。」と一言LINEが帰ってきたのだ。我々は日常的に天気の話題を出すような生ぬるい関係ではない上に緊急の支援依頼以外で彼から連絡がくることはないのでこれは明確に「優しくして」のアンサーだと解釈した。
「愛している」を「月が綺麗ですね」と訳した夏目漱石さながらの文学的代用表現ではないだろうか。
私は2018年も日々体積を増すこの不思議な生き物から目が離せないだろう。