2017年で一番興味を持ったのは、「能」

私が、2017年で一番興味を持ったのは、「能」である。演者さんの気迫と呼吸、動作の精密さに感激した。

2017年12月、北参道駅から徒歩10分ほどのところにある国立能楽堂にはじめて行った。知り合いが招待してくれ、日中国交正常化45周年記念公演「日中楊貴妃の響演」を見た。この記念公演は、日本の能、狂言、中国の崑劇、京劇という4つの伝統芸能を一度に公演するという初の試みであった。見る人からするとなんとも貴重な機会である。4つの伝統芸能には「楊貴妃」という共通のお題があり、京劇”貴妃酔酒”(楊貴妃が祝宴の用意をし、玄宗皇帝が来ることを楽しみに待っていたのに、皇帝は約束を忘れて別の妃のところへ行ってしまい、虚しさにお酒を飲む)や、崑劇”長生殿”(玄宗皇帝の側近安禄山が謀反を起こしため、楊貴妃とともに逃げる。しかし見つかってしまい、楊貴妃が自ら一生を閉じる)、能“楊貴妃”(寵愛した楊貴妃を失った玄宗皇帝は、魂のありかを求めて様々な場所を探す。白楽天の長恨歌を題材にしている)など、劇ごとに物語がすすむようになっている。

私は、演者さんの演技に感激した。足先までの動きが緻密で、お腹から出た声が会場いっぱいに響いて、遠くの席では見えないであろう目の動きまで細かくて。しかしどの伝統芸能も見たことがなかったから、感激したのである。それが自分でわかって、悔しかった。何度もいろんな劇を見た経験があったならば、どんなにこの劇が素晴らしいか、演者さんが素晴らしいかを理解し、感激することができただろうと思った。でも、はじめてみる伝統芸能が、この素晴らしい機会であったことは、それ以上によかったのかもしれない。

いつか、たくさんの伝統芸能を見て、価値の素晴らしさの分かる人になりたい。芸術品も、文章も、その世界にたくさん触れることで、”よしあし”がわかる人になれるのだろうか。もしそうなのであれば、まずはたくさんのものを見て、学ぶことが、よい文章を書いて、よい作品を作って、よい創作することに必要なことであるだろう。

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