武井壮「スポーツが短期間で上達するコツ」編集企画
武井壮:スポーツを上達するにはコツがあります。「自分の身体を思ったように動かせるようになること」です。
それぞれのスポーツに特化した練習を反復すると、なんとなく体が形を覚えて、成績を伸ばせるようになります。しかし、ひとつのスポーツに特化していることは、必ずしも身体をコントロールできていることとイコールではありません。何かのスポーツは得意であっても、他のスポーツでは素人になってしまう。これは、ある程度年を取ってから新しいスポーツを始めようとしたときにまったくうまく行かないことにも関連しています。
「自分の身体を思ったように動かす」とはどういうことか、実際にやってみてください。目を瞑った状態で手を真横に伸ばしてください。目を開けると、その手が上がっていたり、下がっていたりします。しかし、一度正しい真横だと思う位置に腕が伸びている状態を記憶すると、それを再現できるようになります。この「身体の状態を記憶」し、「再現できるようにする」こと、それが「自分の身体を思ったように動かす」ということなのです。どの競技であっても、自分が振る腕や的を狙う腕の高さを見ながら行うことはありません。つまり、見ていない状態でも、身体が「基準となる状態」を記憶している必要があるのです。
この身体のコントロールができるようになる利点は、①反復練習の時間の短縮・伸び率の高まり、②他種目への対応可能性が高まる が挙げられます。
特定のスポーツのために反復練習をする際、やみくもに動かしてフォームを形成するより、理想として頭に思い描く形を自身で再現させる方が効率的です。また、記憶している状態になるように身体を動かすという行為では、調子の良い悪いによってフォームにずれが生じることもないため、安定して成果が得られます。
身体のコントロールができるようになり、かつコントロールできるフィジカル面でのトレーニングが為されると、目で見て頭で考えたフォームを自身の身体で再現することで、普段技術練習を行っていないスポーツでも成果を上げることができます。
自身の身体をコントロールするということが、いかに普段意識されていないかが先ほどの腕を上げる例でわかりましたが、逆に、この意識をすることが「コツ」となるのです。