サブカルクソ女

嘴のはげたファービーだとか古くなった球体関節人形だとかサイババとのツーショットで映る怪しい予言者の店のポスターだとかに囲まれたその店は中野ブロードウェイの4階にある。
読み取りにくいフォントでこれまたなんと読むのかわからない店名が書いてある。

「pays des fees」(ペイ・デ・ フェ)

ペイ・デ・フェのHPには「奇妙で可愛いドリーミーなカジュアルスタイル」と説明書きが載っている。大体どんなブランドかわかってもらえるだろうか。いや、中野ブロードウェイの4階に店を構えるという時点でピンときた人もいるかもしれない。
見た瞬間、サブカルクソ女と叫びたくなるような服だ。それもゆめかわいい系やモード系でもない。モテようがない服。異性として完璧に需要のない服だ。

目が痛くなるような原色のストッキングはヤドクガエルの模様がプリントされているし、一見、普通に見えるチュールスカートの最深層には臓物と骨が描かれている。
それらはまだましな方でカラフルな土偶が光るブルゾンや、紫やミントブルーの毛糸で編まれた心臓柄のボディスーツに人形の頭や手足いくつも縫い付けられたボディスーツ(83,334円)といったツワモノが数多く在籍している。

念のため、カジュアルという言葉を調べてみたら、「格式張らず、くつろいでいるさま。特に気軽な服装のさま。」と出てきた。
身体中に人面をはべらせてくつろぐなど、シヴァ神くらいしかできない芸当だ。強くなければ、着ることを許されない。

そう、ペイ・デ・フェは攻撃に重点をおいたファッションブランドなのだ。
「攻撃こそ最大の防御」とは昔からよく言われていた言葉だ。
現実的なところで置き換えると服のインパクトが強すぎてブスが隠せるのだ。
モテる服を着たところでブスはブスだし、1mmたりともモテに近づくことはない。むしろ、パフスリーブはガンダムに、肩フリルはエヴァンゲリオンへと変えてくる。
この前、最近流行っているカラフルな毛足の長いアウターをきたら、陽気なイエティになった。
snidelを焼き野原にしたい。
他に突っ込みどころを作って一番触れられたくない欠点を隠すというこの理論を研ぎ澄ますと極論、服を着ないという選択を取らざるを得なくなるのだが、ペイ・デ・フェは法治国家に完全に適応している点で非常に優れている。
また、服との相対評価によって顔は意外と普通という評価を勝ち得ることだってできるかもしれない。
確かに奇抜な服は美人にしか似合わないというのは定説だが、それは間違いである。美人は全ての服が似合うだけである。むしろ、似合うか似合わないかで言えば、ブスこそ臓物柄の服をきこなせるのではないだろうか。
その一方、やはり目立つのでいらない人目を拾ってしまい、ブスがばれ易くなるというウィークポイントはあるが、もうそれはイチかバチかで勝負に出よう。
そんなゴブリン突撃隊のような攻守バランスのペイ・デ・フェを着て見えない敵と戦っていきたい。

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