【代理課題】
先日、仕事で新潟に行った。高校の北海道修学旅行をサボった私が足を踏み入れる場所としては、最北端の地である。ちなみに私は中高一貫校に通っていたのだが、中学校の修学旅行先はニュージーランドだった。どうして高校の方が行き先のランクが下なのかは未だ謎である。ともかく、私は新潟で4日間を過ごした。
初日の夜、仕事仲間と夕食を食べにいくことになり、ホテルのロビーで郷土料理が食べられる店を尋ねた。ホテルを出て、目的の店まで商店街を歩いていたのだが、どうもおかしい。時刻は午後8時、それなのに人がほとんどいないのだ。結局、店までの約10分間、すれ違った人の数は10人に満たなかった。店に到着し、暖簾をくぐると、小ぢんまりした入り口に反し、奥にはかなり広い空間が広がっていた。しかしおかしい。店内には紫色の髪をしたエプロン姿の可愛らしいおばあちゃん1人と、カウンターで魚をさばく2、3人の料理人しかいないのだ。私たち以外に客はおらず、BGMもかかっていない店内はひどく静まり返っていた。「2階には1組いらっしゃるんですがねえ、1階のお客さんは今ちょうどみんな帰ってしまって。」言い訳のようにおばあちゃんがつぶやく。結局私たちはその店に2時間ほどいたが、2階にいたのかもしれないその客の姿を見ることはなかった。
2日目の夜、夕方に仕事を終えて時間が余った私は、整体に行くことにした。近くの整体を調べるためにグーグルマップを開く。そして初めて、現在地が新潟市であること知った。新潟市は新潟県の県庁所在地、つまり新潟県の都心であるはずだ。並んだシャッター街を眺め、これが地方都市というものか、と、衝撃を受けながら整体へ向かった。担当してくれた同い年の整体師に、「若い人と話したのはいつぶりだろう。」と言われ、さらに切なくなる。
新潟を訪れ、同じ日本に属しながらもかけ離れた東京と地方との実情を身をもって感じた。郷土料理はどれも、東京で感じることが少ないほっこりとした癒しを与えてくれたし、整体師の若者の笑顔には濁りが全く感じられなかった。それでも私は、新幹線を降りた東京駅の殺伐さと活気のなかで、地方都市に対する切なさを感じずにはいられなかった。