東京駅のインデアンカレー
東京駅のインデアンカレー
境情報学部4年 太田朝子
ここのカレーは辛いよ、という噂だった。私の友人アスカは、ネットに載っていた「口の中が火事や!」という口コミを見て「私辛いのだめなんだよね…」と食べに行くのを断念したくらいだ。
インデアンと言うくらいだから、ターバンを巻いた男の人がナマステーと言いながら接客してくる。異国風の音楽が流れ、謎めいた装飾で溢れる店内…。を想像する。ところがどっこい、インデアンカレーは東京駅から徒歩3分、都会のコンクリートジャングルの一角をなすビルの地下にある。セブンイレブンを右に通りすぎた場所がインデアンカレーだ。
席に座ると「メニュー表見ますか?」と聞かれる。メニュー表が無きゃ注文できんだろうが!と思ったが、それもそのはず、メニューはインデアンカレーとカレーのスパゲッティーなど、選択肢は全部で4つしかないのだ。システムは小学校の給食である。カウンター席でお兄さんが目の前で鍋に入ったカレーを盛ってくれ、1、2分で出てくる。インドカレーだとか、グリーンカレーだとか、○○カレーと銘打ったものはしばしば、これほんとにカレーなの?と思うくらい日本人のカレーの概念を覆してくる品が提供される。しかしインデアンカレーの見た目はなんてことはない、お母さんが作ってくれる普通のカレーだ。そして味は…口に入れるとほんわかと甘味が広がり後から辛さがやって来る。家庭の食卓に並んでいてもおかしくないほど庶民的なカレー。そして食べ終わると、もうここに用は無い、早く立ち去らなければ、と感じさせるほど、のんびりできる雰囲気も歓談する余裕もない。この店はただ、「カレーを食すことだけが目的」の店なんだ。だから仕事帰りのおっさんが多いのだ。
言っておきたいのは、「そんなに辛くはないよ」ということである。「口の中が火事や!」と聞いて断念したアスカちゃん…。この程度で口の中が火事になるなら、お前の人生いったい何度火事が起きているんだ。お前の口内はすでに焼け野原だな!ハハ!と言わせてもらってもバチは当たらないだろう。