DEEP UNDERGROUND CURRY
再開発された東京駅はTHE社会人のための街と化かしており、通りかかりのモラトリアム人間にとっては恐るべき場所に映る。潔癖ともいえるくらい計算されて整列したオフィスビル街。道は広いが空は狭い。小汚い定食屋や居酒屋はないのかとうろうろ探したが、あるのはおしゃれなブティックやよくわからない外資メーカーのお店ばかり。限られた人間しかこれない場所。
と、思っていた。
が、東京駅の醍醐味はアンダーグラウンド(地下)に潜んでいた。
実は多くの高層ビルの地下には大きなレストランスペースが形成されている。地下内で連結されているところもある。どこも美味しそうなお店が集い、チェーンもあれば個人経営のような店もちらほら。
今回のお目当てである大阪発祥1947年創業の「インデアンカレー」さんもここに初の関東支店を構える。店の外からもほのかにカレーの香りが…。内装はルノワールを彷彿とするレトロなテイストで、スタッフを囲むようにして楕円型の大きなカウンターテーブルが一つ。長居する場所という感じでないが、落ち着きのある店だ。メニューは壁に貼ってあるのみでとてもシンプル。
目の前に出された料理はごく素朴な、どちらかといえば薄い茶色のルーに日本の米を使ったカレーとお水とお漬物だけだった。「甘いのに辛い」。馴染みある感じなのに刺激的。たまらない。箸を進めるために辛くて水をがぶ飲みしてしまう。確かに一部のレビューをみると好き嫌いは分かれるかもしれないが、深みのある味わいが癖になる人も沢山いるのだろう。周りの中年のサラリーマンの客たちがそう物語る。
丸の内店店長の山田さんによると、彼も、ここのお店の味に魅せられてそれまで働いていた中華屋をやめ、20年間働き続けているという。続けてこうも語った。「『自分で店を持つようになったら、ここのカレーのレシピくらいわかるやろ〜』と社長に言われてここまで働いてきたんですけど、店長になってもわからなかったです」
どこまでもディープなカレーを是非、食して欲しい。