成り立たない美しさ
バベルの塔は現実には成り立たない構造をしているらしい。
そもそもバベルの塔とは旧約聖書にある逸話をもとにした作品である。天まで届く建築物を立てようとした人間の行動に神が怒って話す言語をバラバラにする。人間の傲慢さを表すとともに世界でなぜ異なる言語が話されるかを説明した話である。
天に高くそびえたつ塔。雲を抜け、レンガを重ね新しくできる塔。その中に人々の暮らしの営みができている塔。けれど、もう少しすれば、その塔はほかならぬ神の手で完成されぬものとなるのである。
“完成しない”塔。まさにヴィーナスやサモトラケのニケのように完成しない美しさを持っているような気がする。いつか壊されるものを愚直に作るという行為はおろかでいて人間として美しいように思う。バベルの塔を見た。湖に囲まれて不安定に立っている塔はいびつで不吉ではあるのだが凛々しく美しくみえた。
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