なぜ売れたか

 

福田研課題「応仁の乱」

応仁の乱

総合政策学部3年川中萌

確かになぜこのような難解、というか史実を並べ立てたような書物が30万部を超えるのかは理解に難い。しかも応仁の乱だ。日本史で人気のテーマといえば武将が活躍した戦国時代や、異様に美化された新選組の活躍した幕末の混乱などの激動の時代。または平安、江戸等の文化が花開く平和な時代のものが多いような印象がある。そこへ応仁の乱ときた。なんと地味なこと…!なぜそんなにも買われたのだろう。

内容は史実にはかなり忠実に書かれているように思われる。話は奈良の大和国から始まり、数人の主人公を軸として歴史の流れが語られていくが、様々な事実が視点を少しずつ替え動いていく。そしてその殆どが歴史的書物の文章に忠実らしい。だから歴史らしく硬い文体で小難しく語られているものが多い。文章に慣れていない、又は歴史が特に好きでもない、若しくは両方の属性を持つ人にとっては全く呑み込めない文章ではないか。嗚呼なぜそんなにも売れている…!

ところでこの作者、弱冠35歳であるという。「応仁の乱」の広告においては彼の腕組みしたポーズが全面に押し出された。なるほど。自己啓発本、あるいは意識の高い教養書を探しているとしよう。そして何気なく広告を見て若き歴史学者の腕組み(まるでどこかのベンチャー企業の社長のような)を見つける。歴史の本だ。緑の表紙で格好の良い。この若い彼の書く歴史書おもしろいかもしれない。この人若いし、読みやすい内容かもしれない。そして”歴史“は最高の教養であり、読んでいると格好がつくのだ。歴史本を読んでいるだけでなんだか知的なように見えるのだ。結構売れてるみたいだし、1000円だし、今日はこれ買うか。

「30万部」。売られたのち、最後まで読まれた本はどれくらいあったろう。この本を最後まで読んで興味深いと思った人はどれくらい在ったろうか。かつてベストセラーになったピケティの21世紀の資本主義だって何人が最後まで読んで理解したか。そんなものなのだ。別に読まなかったとして損をするわけでもない。買う買わぬも、読む読まぬも、楽しむも否も選択は読者のもの。そんなものなのだ。

 

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