思考と身体の動き方の違い
スポーツにはコツがあります。様々なスポーツがある中で、それぞれのスポーツを練習する前にそのコツを押さえておくことで、全てのスポーツに活かすことができる。
そのコツとは、自分の身体を動かす技術を上げるということです。スポーツをするにしても、なにか他のことをするにしても、頭で思っていることと実際にやっていることがずれていると、なかなかうまくいきません。
一番簡単な例を出します。目をつむって立っているときに、「腕を地面と水平に挙げてください」と言うと、プロのアスリートでも、実際の水平よりも上下にずれてしまうことがある。これは、アスリートにとって大きな問題なのです。
スポーツをしているときには、自分の身体に視線が行っておらず、目をつむった時と同じ状態です。つまり、平常時に水平の感覚がズレているということは、スポーツをしたときにもズレているということを意味します。
反復練習を通じて結果を出せるようになったとしても、身体の動きが意識と異なっている。だから一つの種目がうまくいっても、違う種目をやると、また練習しなければならない。すると、練習に必要な時間が増えてしまいます。
この練習時間を短くするためには、身体を動かす技術を上げれば良いのです。先ほどの例で言えば、腕を水平に上げようとしたときに水平に上げられれば良い。実際にやってみた方が理解が早いと思うので、やってみましょう。
目をつむって、水平だと思うところで腕を止めてみてください。これを、目をつむってもらったまま僕が修正します。この場所が水平だという感覚を覚えてください。では、目を開けて、腕を下ろしてください。もう一回、目をつむって、さっき感覚を覚えたところに手を挙げてください。
見てもらうとわかると思うのですが、最初に腕を上げてもらった時よりも二回目の方が水平に近いです。これは、腕の「たぶん水平だ」と思う基準を覚えたということです。この基準が1個ずれた状態でスポーツを習得するのと、今のような基準があって、それをもとに考えながらスポーツを習得するのとでは、伸びるスピードがぜんぜん違うのです。
僕の場合、このような自分の身体を思った形にする練習ばかりしています。その上で、フィジカルのトレーニングをしている。自分の思ったとおりに身体を動かせるようになったら、ある競技について自分が理想とするプロの身体の動かし方を試合場で学び、それを真似できるようになれば良いのです。