ベイマックス=サンのプロモーションは日本チームのケジメ案件。慈悲は無い。
映画『ベイマックス』が日本で上映開始されて間もなく、こんな話が私の耳に入ってきた。曰く、「ハートフルな映画を観に行ったと思ったらアクション超大作を観せられていた」というものだ。何を言っているかよく分からなかったが、別の劇場に入っただとか、実はずっと寝ていて夢を見ていただとか、そういうチャチなものでは断じてなかったらしい。確かに日本版の予告編を観てみると、兄を失った少年がとぼけたロボットと触れ合ううちに…という「あれ?この前WOWOWでじいさんとロボットが出てくるこんな感じの作品あったよな?」的な、どこかで見た感がぬぐえないハートウォーミングな感動作のように見える。「泣きたいときは、泣いてもいいんですよ」、「人を傷つけることを禁じられたロボット」という公式ホームページに書かれているキャッチコピーも見ているこっちが気恥ずかしくなるような白々しさしかない。
ここまで書いているうちに何がハートフルだ、と腹が立ってきた。『ベイマックス』の原作は『Big Hero 6』というマーベルコミックスのアメコミ作品で、ハートフルを求めるほうがお門違い。マーベルといえば『スパイダーマン』だとか『アヴェンジャーズ』、『デッドプール』で有名なアメコミの二大巨頭の一つで、もちろん『ベイマックス』もカーチェイスに格闘、大爆発に高速飛行とアクション要素もジャンジャンバリバリ®盛り込まれている。よくやってくれた。思わず「カワバンガ!」と歓喜の言葉を送りたくなる。かといって日本の予告編でフィーチャーされていたような感動的な部分が皆無というわけではない。要は比重の問題で、長くなればかったるいヘルスケア云々のパートは短すぎず、長すぎずの良い箸休めとなっている。ディズニーといえばハートフルというガチガチの固定観念にカラテ・チョップをお見舞いするいい作品だと言えよう。まだ観ていない人はとりあえずアメリカ版予告編を観てから、もう観てしまって肩透かしを食らった人はマーベル映画作品を全て観てから『ベイマックス』を鑑賞してほしい。