クラナッハ展 今も昔も変わらぬ男たち

 展示会場に入ってすぐ、ルーカス・クラナッハという中世時代の画家のことが少し好きになった。私でも少しはわかる絵を描いてくれているからである。何回かコラムの課題で美術展に行ったが、芸術的素養も知識も皆無な私には理解できないような絵が多く、君にはまだ早いよ、と言われているような気がしたのだ。だがこの人が描く絵は、少なくとも何が書いてあるかはわかる。それだけでどんなにありがたいことか、心の中で礼を言いながら先へと進んだ。
 先へと進み作品を見ていくうちに、クラナッハさんへの親近感は益々増していった。それはこの人が変態だったからである。有名な画家の方を捕まえて変態だとはなんだ、と思うかもしれないが、この人の描く絵には変態ゆえの情熱が込められているとしか思えない。神話主題の裸体像をアルプス以北で初めて描いてみたり、あえて全裸ではなく、体を透明のヴェールで覆うことで余計に体の曲線を強調させる描き方であったり、やはり並大抵の方ではない。モチーフが美しい神話上の人物たちだけあって、その絵の魅力にやられてしまう男は多かったのではないか。
 彼の絵を見て思ったのは、今も昔も男は女の色気にやられてしまうし、そのせいで破滅してしまう男は少なからずいるものなのだ、ということだ。女性に油断したせいで首を斬られたり、女性にこき使われたりする話は神話上でも多いようだし、クラナッハも描いている。はてには老人が金銭で少女の愛を買うところまで絵画に描かれているのを見て、女性とはかくも怖いものだなぁ、とつくづく思う。しかし、描かれる彼女らの美しさを見ると、騙されるのも仕方ないという気にさせられてしまうから不思議なものだ。
帰りの電車に、この寒い中生足を出しているJKを見つけ、思わず見つめてしまった。これに手を出すと破滅するのだろうなぁ、と思いながら美を鑑賞するに留めた。

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