ヒトラーの忘れもの
映画「ヒトラーの忘れもの」は、戦争とは何か、国家とは何か、憎しみとは何か、赦しとは何か、いろいろなことを考えされられるものであった。
舞台はデンマーク。第二次世界大戦後、ナチによって埋められた地雷は200万個以上。それを撤去したのは、大半が15歳から18歳のドイツ人の少年兵だった。捕虜として置き去られた彼らは、母国の罪を償うために、危険な作業を命じられる。半数近くが死亡、もしくは重傷を負ったという。ドイツの少年兵と彼らを強いるデンマークの軍曹、互いの憎しみという感情がいかに赦しへと変化するのか。それを物語としたのがこの映画だ。
日本語のタイトルだと「ヒトラーの忘れもの」だが、原題は「Under Sandet」、英訳だと「LAND OF MINE」だ。地雷の土地が私の土地、としているのだから実にうまくかけているタイトルだ。日本のタイトルから考えると、ヒトラーは地雷という忘れものをしたわけだ。忘れものをしたヒトラーの尻拭いを少年兵にやらせているのだから、やはりヒトラーは尊敬できない人物だ。
この映画を見るにあたり、ぜひ監督のメッセージを読んでみてほしい。この映画では、人間の不完全さが見えることだろう。そもそも戦争を起こしているし、その尻拭いを少年にさせているのだから。「人は美しくなければならない」「美しいとは欠点がないことだ」このようなことが映画製作者の水面下には広がっている。映画製作者に限らず、人間にはそう考える人が多いのではないか。しかし、美しいだけで成り立っているのが人間だけじゃない。醜い部分からしか見えないものがあるのではないか。そのことを気付かせるのが、この映画だ。
世界一の幸福度を誇るデンマークにだって、こんな歴史があるのだ。それにホッとして、のびのびと生きるのもまたいいのではないか。そして、いつかヒトラーみたいな尊敬できない人を、赦せるようになろうではないか。