名作は映画化するべきか

総合政策学部2年 長内 あや愛

映画を見たことがあった。本は見たことがなかった。今回読むことになって、映画のイメージがどうしても先行しながら読んだ。

この物語は、主人公、著名作家のグスタフ・フォン・アッシェンバッハが旅先のウェネツィアで類い稀なる美貌のタージオという少年に出会い、惹かれ

恋に落ちる。ずっと眺めているだけで幸せを感じていた。しかし流行病だったコレラに罹って亡くなってしまい、そのまま旅から帰ることができないままになってしまうというのが、物語だ。

作品中には、老いた自分を若くみせるために化粧をする描写や、眺めている描写があり、多くの人の印象にのこっているだろう。

読んでいて私の中で生まれた疑問は、この本を愛読している人は、映画での実写化を望んているのかどうか、という事である。

本でも漫画でも、実写化するべきかしないべきか、ということがいつも論争に上がる。本を読み込んでいれば読み込んでいるほど、個々にイメージが出来上がっていく。そのイメージを覆す映画を作成することは、一体誰が喜ぶのだろうか。

特に、「ヴェニス死す」は、ぼんやりと想像しているからこそ、主人公アッシェンバッハのお化粧や、描写などがただの変態や同性愛の生々しいものではなくて、美しさを帯びると思うのだ。そのイメージだけで十分なのに、はっきりと視覚化する必要があったのだろうか、と私は疑問に感じる。

文章から得た情報と、自分の中にあるイメージをつなぎあわせて空想することでしか得られない”非現実的な許せる世界“があると考えている。そこに他人が介入すべきではない。では映画を見なければいいではないか、という話なのだが、面白い作品ともあれば、見たくなるのが道理だろう。
だから私の結論は、名作は、映画化すべきではない。

 

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