『ベストセラー 〜編集者パーキンズに捧ぐ〜』
『 ベストセラー(編集者パーキンズに捧ぐ) 』
〜 親友とは 〜
「親友」という言葉の使いどころがわからない。だけど僕の周りの友人は皆、何食わぬ顔でこう言う。
「親友と呼べるのは2人かな!」「まぁ強いて言うならあいつが親友かな」と。
この親友を選出するという行為、なかなか残酷である。例えば僕の目の前で、友人Aが「親友総選挙」を行ったとしよう。友人Aの親友グランプリにノミネートされるのは果たして!?
友人A「うーん、俺の親友は田中太郎かな」 僕「・・・。」
なんということだ。友人Aの友として当選確実だと信じていた僕は、あろうことか田中太郎という名前の男に親友の座を奪われてしまった。つまり友人Aにとっては、僕より田中くんの方が「心の友」なのだ。
これって残酷なことだと思うのは僕だけだろうか? 「友だち」という枠の中で順位付けが行われているわけである。綺麗ごとを言わせてもらうと、僕はこのような辛い思いを友人にさせたくないから「親友」という言葉は使わないようにしている。(僕の友人は幸せである。)
だが、そんな僕の「親友使用恐怖症」を治療したのが今作「ベストセラー(編集者ホーキンズに捧ぐ)」だった。
才能なしとタライ回しにされたトマス・ウルフが行き着いたのは、数々の名作に携わった敏腕編集者ホーキンズの元であった。トム(トマス・ウルフ)の才能を見極めたホーキンズは、家族そっちのけで後のベストセラー作家と仕事に明け暮れるが…
あーなるほど。ここまできてやっと「親友」だよな。観賞後そう思った。20代前半の若造が使う親友という言葉から一気に重みが消えるのを感じた。この先、僕にも「親友」と呼べる友ができ、友の本音を目の当たりにした時には、最大の敬意を持って被っている帽子を頭から外すことにしよう。
福田周平