What a mess! グレース・オブ・モナコ~公妃の切り札~

 画も話も綺麗な、おいしい題材であったことは確かだ。
 モナコのレーニエ大公と結婚し、ハリウッド女優を引退したグレース・ケリー。公妃として、モナコがフランス領となる危機に直面した時の彼女の行動を題材としている。美しい女優が公妃という立場で苦しい目に逢いながらも芯を強くもっていたその姿は、映画館の大スクリーンでどこまでも綺麗な画として成立し、最後の演説で“感動”のフィナーレとしてまとめられる。
 監督のオリビエ・ダアンがイギリスのThe Upcomingでのインタビューで「史実に基づいているとはいえ、歴史映画ではない。ひとりの女性が、彼女として、妻として、母親として、働く人として正しいバランスを見つけ出すことがどれだけ難しいことなのかを描きたかった」と語っている通り、そのメッセージは劇中にセリフとしても登場する。知られざる公妃活躍のエピソードは、「アメリカ流」が人気を博す現代での、社会で自己実現をしようと意気込む女性達の勇気にでもなるつでも言いたげだ。
 ひとりの女性が背負う役割の多さはよく題材になる。バタバタと走り回り、自分自身の正しいあり方が何かわからず悩む人々も勿論多数いる。しかしその人々に重ね合わせるには、彼女のエピソードはピースが大きく親近感はない。これならばいっそ、彼女の姿を卑近にせず、高級感ある姿で「ヨーロッパ流」に描いてくれた方がよかった。
 この作品の、あまりにもストレートなメッセージ。それなのに結局彼女がとったバランスが何かわからない、“とっちらかった”ストーリー展開。モナコ公妃のエピソードと、作品で描きたかったメッセージとのバランスこそ、見つけ出さねばならなかったのではないか。

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