『異邦人』
『異邦人』
〜 大多数は、正義 〜
「大多数は、正義」とは言うものの、随分と少数派が生きやすい世の中になってきたのではないだろうか。
「異邦人」の主人公、ムルソーがもし現代に生きていたら、たぶん死刑にはなっていなかった。ママンが死んだ翌日、映画館で喜劇を観て笑い転げる。女と遊ぶ。人を殺した原因を「太陽のせいだ」と言い張る。たしかにどれも狂気じみて感じるが、今の世の中、そんな人間がいてもおかしくない。むしろ殺人の動機を「太陽のせいだ」と言えるだけマシに思えてくる。
そんな現代には、普通でない「アブノーマル」な人間が溢れている。大量殺人事件だとかテロだとか。現代に溢れる不条理な人間は、ムルソーとは比べ物にならないくらい不条理だ。
ただ「異邦人」を読んだときに私が心を寄せてしまったのは、そんな「アブノーマル」な、ムルソー側の人間だった。
人を殺してしまった人間にも何かしらの理由があったかもしれない。「異邦人」を読んでいると、ついついそんなことを考えてしまった。
ただ「殺人」という罪はやはり衝撃的で、人を殺した側を擁護する人はそうそういないのだろう。別に自分が殺人犯を擁護するつもりはないが、のっけから悪いと決めつけてかかるのは止めたいなと思った。
福田周平
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