「異邦人」
異邦人
伊東 宏
世の中に理不尽なことや不条理がたくさんある。
世の中は平等ではない。生まれた場所、環境、生まれ持った顔、性格。
そりゃあもう色んなものに左右されまくりのこの世の中だ。
そう根底にはあるのだけど、ニュースを見るようになったからか、それとも歳のせいか、世の中の理不尽や不条理に腹がたつことが多くなった気がする。
例えばいじめで、過剰労働で命が絶たれること。例えば子供が欲しい人の所には出来ず、虐待や無責任な親の所にはポンポン子供が出来ること。世の中不条理なことはつきない。
今回の小説「異邦人」は不条理な話で有名な作品。不条理で有名というから主人公のムルソーがどれだけ不条理な奴なのかを期待して読むと、思ったより普通だった。僕はあまり不条理に感じなかった。もしかしたら僕が「異邦人」なのかもしれない。
葬式では悲しくなくても、悲しむ演技をしなければならない。演技をしなければ、不条理だという。ムルソーはそういった慣習的に行われている演技よりも、疲れた、眠いなど肉体的に感じることを真理とした。そして、殺人さえも太陽のせいにした。
もしかしたら、人間なんて本当はそういう物なのかもしれない。例えば僕が一日かけてフルマラソンを走りきった直後に訃報があっても、「あっ、そう」と言って訃報を持ってきた人を驚かせるかもしれない。でもそんなことをしたら非難囂々なわけで・・・
でも、まぁ、この世間一般に悲しむ約束事があるから、そういう時には堂々とお休みが取れるわけで。仮に悲しくなかったとしてもマジョリティーに身を隠すことは大切なのかもしれない。この小説の難しさもさることながら、日々うまく生きていくことにも難しさを感じたお話だった。