異邦人
異邦人を貫いたムルソー
総合3年 沖野のぞみ
ムルソーはただなんとなくの虚無感から世界への無関心を貫いていたのだろうか。恋人に言われるまでもなく、検事に見抜かれたほどのインテリジェンスを彼は持っていた。どのように立ち居振る舞えば公判が有利に動くかなど少し考えればわかるものだろう。私にはどうしてもムルソーの行動に一貫した信念があるように見えてならなかった。
司祭に掴みかかって声を上げる姿は、無気力だったそれまでのムルソーからは想像できないものだ。司祭の言葉に彼の信念を虐げる何かがあるに違いない。そう思って司祭とムルソーとのやりとりをなぞっていると、根本的な疑問に行き当たる。そもそもなぜここに司祭がいるかということだ。だって、舞台はアルジェリアだったはずだ。主宗教がイスラム教の国に聖職者がそんなにほいほいいるものなのか。そこまで考えて、ようやく合点がいった。これはアルジェリアがフランスの支配下にあった時代の話だったのか。
カソリック教徒が植民のために後から流入してきた中で、自らの信仰を貫き通したムルソーはまさに「異邦人」であった。日本史の授業で「踏み絵なんて、試された時だけ踏んでおけばいいじゃん!」と笑っていた私にはムルソーの気持ちを理解することなどできまい。だが、命に代えてでも守りたかった信仰とはどのようなものなのか、その境地を知ってみたいような気もする。
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