デトロイト美術館展 代理コラム

 私もこれまでに何度か美術館へ訪れたことがある。静かな空間でゆったりと時間が流れるあの雰囲気は嫌いじゃない。しかし、どうも美術館での自分の立ち振る舞いに戸惑ってしまうのだ。腕を組み、眉間にしわを寄せる。顎を指でこすり、隣の人よりも長く絵の前で立ち止まる。意味もなく頷く。芸術なんて少しも分からないのに、何だかいかにも芸術を真に理解している人間を演じてしまう気がするのだ。いや、むしろ本当は芸術を真に理解している人間などいないのかもしれない。純粋に良いと思った自分の気持ちも嘘なんじゃないかと思えてくる。そうした嘘で塗り固められたような空気が油絵の具の匂いと相まって、気持ち悪くて仕方がない。
 デトロイト美術館展に行けなかったので、せめてもの思いで展示された作品をGoogleで画像検索した。インターネットとは便利なモノだ。画家の名前を入力すれば素早く多くの作品を閲覧することが出来る。画像を拡大してより細かに観察するも自由、作品の詳細について調べることも容易い。そして何より、自分独りで鑑賞することが出来る。自分みたいな芸術が分からない奴はネットで充分かもしれないと思えた。
 しかし、ネットで観れば観るほど、やはり生で観るべきだという想いが湧き上がった。画家たちはこんなパソコンで自分が描いた絵を鑑賞することなど望んではいない。生で観るときっと何かが違うはずだ。そんな力強さがモニター越しに滲み出ている。

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