代替課題 〜理性と本能、腹コンディションと食い意地〜
『福田研 代替課題(10/14)』
〜理性と本能、腹コンディションと食い意地〜
映画の撮影現場には「ケータリング」なるものがほぼ必ず用意されている。このケータリングとは主に、俳優部・制作部の人たちが小腹を満たす為に用意されているものであり、駄菓子・パン、さらには果物など種類が様々、簡単に食べられるものがラインナップされている。
とにかく素敵。初めて見た時はまさに「え? これ本当に食べていいの?」状態だった。そんな僕だ、現場に行った時は周りの様子を慎重に伺いつつ、この「オアシス」の場所を探す。
その日のオアシスは、なかなかに潤っていた。お菓子だけではない。なんとツイストドーナッツまである。さらに、一度は飲んでみたかったがその値段故買うのを躊躇っていたカロリーメイトのゼリーまであるではないか。これが全部タダ。「まずはツイストドーナツから」と普段の僕なら二つほど拝借するところだが、この日は何かがおかしかった。
食欲が湧かない。さらには腹の上部、胃の位置に謎の痛みがある。「そんなはずは」とドーナツに手を伸ばそうとするが、身体が動かない。仕方なく、どうしても欲しかったカロリーメイトゼリーとチオビタをポケットに隠し、その場を去る。
結局、お弁当も食べる気が起きなかった僕は、不完全燃焼感を抱きながら家に帰った。(もちろん弁当は一つ持ち帰った。)
その日の夜、無理矢理ご飯を口に運んでいた僕だが、あまりの腹痛にギブアップ。素直に布団に入る。痛い痛い痛い痛い。なんだこの痛さは。胃に穴でも空いているのではないだろうか。身体はアツいのに寒気が引かない。(この時、既にツイストドーナツに対する未練などはとっくに消え去り、痛みにしか意識が向かなくなっていた。)
翌日、千鳥足で向かった病院で言い渡された「胃腸炎ですね」のお言葉。何となく予想はできていたものの、いざそう言われると滅入る。「あそこで無理にお弁当を食べていなければ…」。
腹コンディションが悪くたって食い意地は張る。自分の身体を守るためにも理性的であろうと、身をもって思い知らされたのであった。