ジャニス リトル・ガール・ブルー

ジャニス ジョプリンの名前はどこかで耳にしたな、どんな歌を歌う人だったろうか...頭の片隅に浮かべつつ、人が行き交う金曜の夜の渋谷を映画館を目指して歩く。静かな小さなシアターの最後列の端に落ちついた。

映画が始まり彼女の歌声が響く。耳にした瞬間何か体中に電気が走ったような、周りの空気が尖ったような、背筋がピリつく緊張感を感じた。とても強烈で野生の動物のように乱暴に叫びまくっているかと思いきや、突然息遣いまでも分かるとてもか細い少女が振り絞るように呟き、嘆いている。さらに彼女の表情を見ると、幸せそうな笑顔の影に必ずと言っていいほど、悲観、哀愁、孤独、過去の闇がふと現れ出る。それでもまっすぐに生きる彼女は歌う。わたしも含め普通の女性が思う、好きな人とただ一緒に過ごして幸せを感じたい、愛されたい、というシンプルな願いを歌う。ひたすら彼女の感情がわたしの中に流れこんできていた。

なぜこんなにも彼女の感情に寄り添えたのだろうか。それは、当時の映像、家族や友人、恋人、また本人が書いた手紙が語られたことが彼女の過去をより生々しく、身近に感じられたからだと思う。(個人的には手紙の語り手がとても印象に残っている。) 特に当時の映像で印象強い場面は、彼女が有名となって、帰郷し同窓会に参加したシーン。学生時代は虐められ、友達もいなかったので良い思い出はない。10年ぶりに会う同級生は皆冷たい目線で見つめるだけで話しかけてこない。明らかに気まずい空気の中それに気付かない馬鹿な記者は次々と笑いながら学生時代の頃の質問をしていく。彼女は今にも逃げ出したそうな表情に引きつった笑顔を貼付けて応えていた。見ていてわたしも目を覆いたくなった。でもこれが彼女の歌の源の1つでもあるのだろう。

今でも世界中の人々に愛され、影響を与えている彼女はたったの4年間しかステージ上で歌っていない。歌と一緒に、自らの心や命も引きちぎって人々に勇気や愛を与えた彼女は27歳で燃え尽きた。「こんな生き方をしたい」素直に思った。

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