『ロックンロールは、時代を越えて』
『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』
〜ロックンロールは、時代を越えて〜
シアター・イメージフォーラムで映画を観るのは二回目だ。前回観たのはたしか「ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古」という映画だった。どちらも伝記というかドキュメンタリーというか、なかなか「通好み」な映画を上映する映画館である。
本作「ジャニス:リトル・ガール・ブルー」も、そんな通好みな映画の一つと言えるだろう。ジャニス・ジョプリンの生涯が、彼女の関係者そして彼女自身のVTRによって描かれている。
しかし、はっきり言ってこの手の映画、機会が無い限りは余程のファン以外わざわざ映画館で観ることはないのではないか。恥ずかしながら、ジャニスの存在を存じ上げていなかった僕が劇場に脚を運べたのは、まさに奇跡である。(福田先生ありがとうございます。)
ジャニスの存在に「?(ハテナ)」が浮かんだままの僕は、もちろん上映前も注意散漫。いつもなら映画の上映前は精神統一くらい図るものだが、本作ばかりは客層に目がいって仕方なかった。
中でも注目株だったのが、ブーツカットのデニムを履いた “いかにも” ロックンロールテイストなおじさん。
注目の「ブーツカットおじさん(敬意を込めて)」は僕の期待を裏切らなかった。上映中、ジャニスの曲が流れるたびに僕の斜め前で身体を左右に揺さぶっているではないか。起承転結がない本作における楽しみ方を体現してくれていると受け取った僕であったが、まだまだ青二才、恥ずかしさに負けて脚を組み替える程度に留まってしまった。
しかし今も尚、彼女の力強い歌声に身体を揺らす人がいる。しかもスクリーン越しに。劇中「ライブはご褒美だ」と彼女は言う。ブーツカットおじさんの「軽快な横揺れ」は、時代を越えてジャニスの孤独な心を癒しているに違いない。
福田周平