日本国宝展

館内混雑しております

~ 展覧会 「日本国宝展」~

総合政策学部4年

高瀬潤

71035214

 

「只今、館内混雑しており入場制限で10分程お待ちして頂きます。」

嘘だろ。そんな私のぼやきを掻き消すように、展覧会が行われている「平成館」の外では喧騒と言っていい程、人々の活気があふれている。まるで5歳児がこれから大好きな玩具を買い与えてくれるのを知っているかの様な声で多く老人や外国人たちが談笑しているのだ。国宝を拝められるというのに、たかが10分程度でぼやいてしまった自分を恥じつつ、やっとの思いで入館する。

入り口でしっかり520円を支払い、竹下景子さんの音声ガイドを準備し展示品を見に行く。頭だ。たくさんの人の頭だ。中には照明に反射している頭も。いやこれは展示品ではない。それ程人々が一つ一つの展示品に対し群がっている。さすが国宝だ、年齢・国籍に関わらず多くの人を魅了している。私もそれにあやかろうと、ガイドを聴きながら傍目で見ていく。どの作品も当然、歴史的価値は高い物であり、中にはとてもきれいな色彩で描かれている物や、細部にまで繊細に作りこまれている物もある。段々と出口が近づいてきた。

「多聞天(たもんてん)立像(りゅうぞう)」。気づくと、その作品の前で立ち止まっていた。

財福・無病息災の神として名高い「毘沙門天」の像の1つである。その堂々たる立ち姿・厳格ある表情・踏まれている邪鬼、そのすべてが絶妙なバランスで造りこまれており、重厚感あふれた圧倒的な存在感に魅了されてしまったのである。私は美術や神仏にホトホト疎いのだが、そんな私でもこれは他の作品とは違い特別なオーラを発しているのだと感じた。「多聞天立像」と対峙する。周りの喧騒が感じなくなる。言葉で表現できない感情が心に生まれる。これも感動というものだろうか。ふいに私と作品の間に人が立つ。きっとこの人もこの作品に何か感じたのだろうと思いつつ、博物館を後にする。

人でとても混雑しているが、それだけこの「国宝展」に行く価値はあるだろう。人生で国宝をお目にかかる機会というのは少ないだろうし、なにより私のような人間でも「何か」を感じられることができるのだから。

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