スランプは頭と身体のズレが原因
武井壮:スポーツにはコツがあります。効率よく上達させるためには身体を考えている通りに動かすトレーニングが大事です。僕は自分の身体を頭で考えた形にする練習を大事にしています。今までに色々な競技をやっているのですが、技術練習はほとんどやったことがないんです。試合場でかっこいい飛び方をしているやつをみて「ああやってやるんだ」とみて、真似出来るように意識しているんですよ。大学生から始めた陸上の十種競技で、たった2年間で日本チャンピオンになることが出来た理由がここにあるんです。
簡単な例をやってみましょう。目をつむって立ってください。そして腕を身体の真横に水平に挙げてください。腕と肩と手が一直線上に並ぶようにしてみましょう。こう言って腕を挙げてもらうと初めはみんな水平の位置がわからない。ちょっと上に上がったり下がったりします。スポーツ選手でさえも「ここまっすぐだ」なんて今まで意識したことがない。だから突然に一直線に腕を挙げてみると正確な位置がわからないんです。
これはスポーツをする人にとって大きな問題です。静止した状態で、頭が考えている水平の位置に腕を挙げられなら運動中はなおさら。例えばボールを投げる時って自分の腕は見ていないでしょう? 僕たちはスポーツをしている時に身体が見えていない状態で自分の身体を動かしているんです。目をつむっている状態と同じですよね。
スポーツ選手でも反復練習をしてきた技術だけはうまいのだけど、他の競技は素人になってしまう人が少なくない。新しい種目をやろうとしたら練習する時間が膨大に増えちゃうんですよ。その原因が頭と身体のズレ。スポーツ選手のスランプはたいだいこれが原因です。これを解決するためには頭と身体のズレを修正することが出来ればいいんです。水平に上げようと意識した時に水平に上げられればいい。初めは出来なくても意識すれば誰でも直るんです。スポーツが上達したわけではないのだけど、水平の位置という基準ができました。
こうやって基準を一つ作ると練習する伸びるスピードがぜんぜん違います。何も意識しなくても身体を頭で考えた通りに動かせるようになります。スポーツに限らず何でも、頭と身体がずれていると上手くいきませんよね。僕が技術の練習をあまりせずにスポーツで結果がだせるのはこういう理由なのです。