人心掌握にご注意(帰ってきたヒトラー)

 どんなバカだって、名前くらいは知っている。今世紀最悪のドイツのカリスマ指導者、アドルフ・ヒトラー。
 彼の名は忌むべき存在として、または理解者たろうとする人々に憐憫さをもって語られる。EUで唯一の堅実な先進国、ドイツは尻拭いをさせられ続けている。まさに目の上のたんこぶだ。
 一昨年ベルリンに行った。真冬の重い空ということもあったが、街全体で、今だに謝罪を繰り返していて、なんとも言い難い、後ろめたさを感じた。
 そんな張本人が、呪いとも呼べるタブーに手を出した。聞くと、ドキュメンタリーとして、実際に国民の生の声を織り交ぜてあるらしい。現代はヒトラーをどう受け入れるのか、それだけでも興味を惹かれる。

 笑いに笑った。大爆笑だった。劇場全体で笑いが起こっていた。序盤のセルフィー祭に、軍服クリーニング、これはタイムスリップお約束のウケどころだったかもしれない。が、それは笑いへのハードルを下げるための陰謀で、ヒトラーを面白いものと感じさせられるのだ。ナンセンスとブラックジョークの境を曖昧にする。空気が彼の味方になっていく気がする。
 全国行脚で国民とドイツについて語っていくシーン。芝居、とわかっていても心動く人は多かっただろう。本物の映像を見たことがないが、ヒトラーは役者だ。飛びっきりの。自分を演出する方法、観客を掴む方法。沈黙の有効性、迷いを見せない姿勢には敬意を表したい。移民を押し付けられるドイツ、周辺国は当然の報いと考え、自身も贖罪の態度を示し続ける。そんな態度には不満を禁じ得ない。特に大戦後に生まれた世代にとっては。真っ直ぐな愛国心と、迷わない強さ、そんなリーダーは魅力的に映るだろう。
 だが果たしてそれはドイツ人の身にだけ起こるものだろうか。もし付き合うとして、決断力のある男性は魅力的ではないだろうか。本物のヒトラーだったと気づいた時にはもう遅い。
参院選には行こうかな。責任を果たさねば文句をいう筋合いもない。

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