『漫画喫茶体験記①』~代替課題~
『 漫画喫茶体験記① 』
漫画喫茶またの名をインターネットカフェ、そんなインドアな方々の避暑地から日々の生活費を頂戴すること早2年。漫画喫茶で働こうと思ったきっかけは、当時アルバイトをしていたザ・ブラックバイトでおなじみのユニクロを辞めたかったからである。
「バイト楽勝、週三出勤、月8万収入」をまるで自分の才能で稼いだかの様に豪語する奴は結構いる。怠惰でいられるバイトに巡り会えた彼らはグループワークの際、往々にして甘い蜜を吸い単位を獲得する。そういう連中である。とにかく働きたくないが金は欲しい僕だ、彼らに羨望の眼差しを向けないわけがない。「次のバイトは絶対に楽なバイトにしてやる」と決意したのである。
オーケー・Google「バイト 楽 高時給」。堂々の第一位に躍り出たのが漫画喫茶というわけだ。そこからの行動力たるや、モンゴルの野原を翔るスーホの白い馬もびっくりである。
まずは最寄りの藤沢に位置する漫画喫茶を洗い出す。家の近くに「快活CLUB」という満喫界の読売ジャイアンツ的な店舗があるのだが、賢い僕は電話すらしなかった。その店舗は “絶対に忙しい” からだ。
判断基準は「店舗のマップ」である。近所の快活CLUBは二階建て。その上ダーツにビリヤード、食べ物の販売まである。雑誌を読みながらテキトーに金を稼ぐことなどできそうにない。もう騙されてたまるか。俺だって楽勝の人生を送ってやる。大丈夫。この調子で探せばいい。
一つ、非常にうまそうな店舗を発見した。ワンフロア、シャワー無し、利用する側にしてみればクソみたいな店舗だが、働く側からしてみれば願ってもない優良物件である。
早速電話をしてみる。勤務時間帯は遅番。無論、深夜給と利用者が少ない事を見越した最良の選択である。
「あ、すいません。アルバイトの募集情報を見まして、深夜帯で働きたいのですが。」
「深夜帯は人足りてるので。」(ガチャ)
店員のこの対応。間違いなくまともなバイトじゃない。すなわちいい加減でいいということがこの電話で確証されたわけである!!
普段なら今の電話で気分を害しているところであるが、今の僕にとっては最高裁で勝利を決めるくらいの決定的な証拠。
間違いない、漫画喫茶のアルバイトで僕の人生は変わる。そう確信していた僕は、遂に現在の勤務先である “モンテローザ” 系列の店舗に電話をかけるのであった。
(つづく)
福田周平