ヘイルシーザー
ヘイルシーザー
総合4年 伊東宏
悔しい。この映画を見終わったときに思った一番の感想だ。
バーンアフターリーディングが大好きな私にとって、コーエン兄弟の今回の作品はとても楽しみであった。しかし、私は心の底からヘイルシーザーを楽しむことができなかった。その理由は知識不足である。往年のハリウッド映画業界に興味や知識を持ち合わせている人ならこの作品はもっと面白おかしく見られるのだろうなと思う場面が映画の中でいくつも登場した。モデルやオマージュ元がある話なので、年季の入った映画ファンなら元ネタ探しも楽しみながら鑑賞のできる映画なのであろう。
例えば作中劇の「ヘイル・シーザー」の副題は “The tale of Christ” になっているが、これはもちろん大セットや舞台が共通している「ベン・ハー」の副題だし、ベン・ハーの名シーンが劇中劇でもパロディ化して描かれている。そうなると、ジョージ・クルーニー演じるベアード・ウィットロックはチャールトン・ヘストンというわけで、見た目も往年のかれに寄せてある。それで作中であんな感じなのだから失礼すぎる・・・
しかし、そのような背景を知らないと楽しめないわけではもちろんない。映画としての楽しめるポンイトは他にもたくさんある。だが少しだけこれらの人物の人となりや背景を知っているだけで、急に映画のなかの人物たちが美点や欠点をそなえた人間として浮き上がってくるような気がする。
何よりもこの映画の魅力は「映画についての映画」であることだとおもうので、知識があればある程楽しめるのは当たり前だし、映画への監督の思いもより強く感じ取ることができると思う。今回は自分がまだその域に達していなかったことが悔しいと思えるシーンが多々あったのが残念である。