「日本国宝展」 東京国立博物館 平成館

時を超えてもなお、美しいものたち

 

平成以降では3回目となる、東京国立博物館の「日本国宝展」を観てきた。休日の昼下がり、ということもあり平成館の中は老若男女多くの人々で賑わっていた。会場には縄文時代から江戸時代まで、北海道から沖縄県まで、全130点が展示される。展覧会会場に足を踏み入れるやいなや、まずは奈良県法隆寺が所蔵する「玉虫厨子」がわれわれを出迎える。会場は5つのカテゴリーに分けられており、どのフロアに行っても、日本史の教科書の中で目にしてきた有名な品々ばかりである。私が大学受験勉強の際に大変お世話になった「日本史資料集」の中に入り込んだようであった。

絵画、彫刻、工芸、典籍、考古資料、なにをとっても見ていると、吸い込まれるような感覚に襲われた。さすがは国宝、といったところであろうか。中でも、京都府智積院が所蔵する安土桃山時代の元禄元年に描かれたとされる長谷川等伯の作品「松に秋草図」には圧巻の迫力があった。等伯の金碧障壁画には、実際に見たものにしかわからない魅力がある。繊細なタッチなのに植物の力強さが感じられる。等伯は季節の植物を描いた障壁画で有名であるが、彼はどのような視点で日本の四季をみて描いてきたのだろうか、彼に想いをはせずにはいられなかった。

ところで、日本の美術館にいくと必ずこのような注意書きを目にする。

「写真撮影・鉛筆以外の筆記用具持ち込み禁止」

しかしながら、これは決して世界の共通認識ではない。ルーブル美術館をはじめ、ヨーロッパの大きな美術館では、ストロボなしでの写真撮影が可能で、模写をする人さえいる。これは単なる文化意識の問題だろうか。はたまたマナーの問題だろうか。注意書きを見る度になんだか寂しい気持ちになる。文化に触れたい、感じたい、学びたい、そう思っている来館者と美術館側の溝がいつか埋まることを期待したい。

 

 

 

福島柚乃

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