アイドルはいる(代理課題)
5回目の春学期が始まった。大学の新学期、しかも3年生ともなると、かつての学生時代にあったワクワク感は皆無に等しい。いつも通り、始業時間を過ぎて、初回の英語の教室に駆け込むと、目に飛び込んできたのは、青い瞳に栗色の髪の白人のお姉さまだった。その瞬間、口が半開きのまま時が止まる。大学に入って早2年、おじさん、おばさんの講義は嫌という程受けたが、こんなにチャーミングな先生の授業を受ける日が来るとは。こうなると俄然やる気が湧いてくる。今まで遅刻しかしたことない僕が、10分前には着席しているし、小テストの勉強なんか始めちゃったりする。真面目に板書をするのなんて果たして何年ぶりなのだろうか(というより、そうでもしないと、目が釘付けになって、次第にとろ〜んとなり、上の空になってしまう)。男の子の可愛いと言われる所以であり、悲しい性である。
男の子には、いつだってアイドルがいる。幼稚園の先生から始まって、部活の練習中にコートの脇を通って帰るあの子だったり、いつでも気になるアイドルがいて、そのこの視線を気にしている。そして、少しでもよく思われたい、褒められたい、という思いが大なり小なりある。かつて、島田紳助が「男のモテたいという思いが日本の国力につながっている。」と言っていた。そういう思いは、必ずしも恋に発展するわけではないけれど、そういうアイドルにいいところを見せたいという下心は、何よりも不純で何よりも健全なエネルギーであり、いつも男の子の原動力なのだ。それは、おそらくいくつになってもかわらないのではないだろうか。きっと、年を取っても、毎日通勤電車で見かける美女に胸躍らせながら会社に向かうのだろう。そう考えてみると、今の僕の生活に、ドキドキや刺激が不足し、どこか色味が感じられないのは、アイドルが不在だからかもしれない。