理想の人生(伊藤若冲展)
嘘だろ。
水曜日の昼過ぎに上野へ。噂では聞いていた。でもまさか、平日のお昼なのに。100分待ち。一人だったら、耐えられない。暇が苦にならない友人と鑑賞しに行くことを強くおすすめする。
伊藤若冲、生誕300年。今まで若冲なんて名前も聞いたことがなかったのに、NHKの特集?美の巨人たち?突然湧いてきたとしか思えない、しかしそれにしては異常な盛り上がりを見せている。首を傾げながら100分待ちを乗り越えて会場に入った。
え、地味だ。最初に私を迎えたのは鹿苑寺の葡萄の水墨屏風。細かくて、つぶつぶしている。でも案外葉っぱのところはさっとしているところに人間味を感じた。進んで行くうちに妙にコミックチックなトラが。これが江戸時代に書かれたと思うと斬新だ。確かに美しいし、あの時代にしては新しいかもしれない。が、これであの盛り上がりようはちょっとおかしい。それは詐欺だ。どこにあるんだ。散々宣伝でみかけた、あのド派手なやつは。
エスカレーターを上がる。視界が開ける。赤い部屋に群がる人。半円形の部屋にずらっと並んだ絵画。一瞬立ち竦んだ。遠目からだったが、『釈迦三尊像』3幅と『動植綵絵』30幅、計33幅が揃った姿はむせかえるようだった。密度濃いというか、並んでいる時も散々画面上で見ていた。アップでも。その技法も飽きるほど紹介されていた。なのに。これが本物の力。忘れていた。久しぶりにずどーんときた。人が多すぎて最前列まで行くこと困難なのが、非常に残念。透き通るような百合、ハートを背負った孔雀。発見がたくさんある全体像に圧倒されたら、そのまま次に向かって欲しい。次へ行く通路で若冲のもはや狂気とも思える細かさを味わえる。蓮の拡大図は私のお気に入りだ。
どこまでも絢爛に、贅沢に描かれている絵画たち。40歳で家業を引退してから、本格的に絵画をはじめたという若冲。さっさと引退して、好きなことをして暮らす老後なんて、ああ、ずるい。
総合政策学部4年 吉岡優希