『ルーム ROOM』
『ルーム ROOM』
家が大好きだ。最近いっそう思う。あたたかい布団に親父からもらった低反発の枕。一週間くらい自分の部屋から出たくないと思う今日この頃だ。辛くないインフルエンザに感染しないものだろうか。
ただ「閉じこもる」と「閉じ込められる」ではわけが違う。閉じ込められるのは嫌だ。お金を貰える治験のアルバイトでもないのにだ。
バイトでも自分の意志でもなく、七年間も「閉じ込められて」しまった女性の物語。それが「ルーム ROOM」。監禁された女性と監禁中に出産した子の脱出前と脱出後を描いた作品である。
「はじめまして、世界」というキャッチフレーズは、確かに新鮮であり「へや」と「世界」の間で揺れ動いた二人を端的に象徴している。
ただ、男の僕が共感しきることは難しかった。自分を閉じ込めている男との間に子どもを産んだ女性。部屋の外を知らない子ども。脱出後、初めて目の当たりにする光景。生々しい辛さと人間の強さ。女性の母性。母と子の絆。どれもヒシヒシと伝わってくるのだが「それ以上」がない。
女性に生まれ変わってもう一度この作品を観たい。これに尽きる。おそらく女性と男性では、今作に対する感じ方に埋められない大きな「差」がある。「女性目線の作品」とひとくくりにするのは少し気が引けるが。
この作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞したブリー・ラーソンは、「ショート・ターム」という作品で脚光を浴び始めた。思えば「ショート・ターム」も女性目線で描かれた作品。どちらもかなりの難役に思えたが見事に演じきっていた。「等身大の女性像」とでも言うのだろうか、華々しい海外のスターにはない魅力に目が離せない。
福田周平