ダブル主人公

総合政策学部
4年澤津 勝人

伝説の天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を映画化した伝記ドラマ。と聞いただけで、自分の関心は一気に吸い寄せられた。やはり「天才」が主人公だと見ていて気持ちが良い。映画を見ている間だけは、自分自身もその天才の頭に入り込めるため、天才と自分を重ね合わせる感覚が擬似的快楽に繋がる。そのため、内容なんてそこまで期待せずとも、楽しめる映画であろうと高を括っていたが、映画冒頭の描写と音楽と演技で自分の安易な予想は綺麗に覆された。時は1972年、米ソ冷戦の真っただ中、両国にスパイが入り乱っている混沌とした社会情勢を序盤のものの3分程度で描き上げられていた。また、その際の登場人物もそれぞれに強いキャラクターがあるのだが、ずば抜けた世界観を作り出していたのが、主人公ボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)である。

当時のチェス世界王者決定戦は、両国の誇りを掛けた盤上の第三次世界大戦のようであった。そんなチェスと運命のごとく引き合わされていくボビー・フィッシャーが、幼少期の頃から才能の片鱗を見せ活躍していく姿は、やはり爽快であった。そんな順風満帆なボビーの前に突如現れたのが、チェス最強国ソ 連が誇る王者ボリス・スパスキーである。この出会いから、二人対決は避けては通れない運命となり、互いの存在が互いに精神を狂わせていった。この映画の最大の見所は、ボビー・フィッシャーだけの物語だけとどまらず、ボリス・スパスキーにもスポットライトが当たっている点である。両者にスポットライトが当たることで、両者の対決がいかに極限状態かを映し出され、まさにチェスという究極の頭脳戦にしかない緊迫感が伝わってきた。

 久々に、ノンフィクション独特の飲み込むほどの訴求力を久々に堪能させてもらった。やはりSF映画やアクション映画よりも、見終わった後にお得感があるのは、ノンフィクション映画だなと確信した。

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