リービングラスベガス
総合政策学部 4年 澤津勝人
重度のアルコール依存症のニコラスケージことベンが、映画冒頭で登場する。ニコラスケージといえば、近年の作品がほとんどアクション系のため、本人の演技力になかなかスポットライトが当たっていないが、この映画をみれば、改めて名優であることを気付かされる。ラスベガスが舞台となっており、全財産を失い、ラスベガスに人生を賭けて、乗り込むベンのすがた、映画序盤のなかで、もっとも印象的なシーンである。しかし、ベンの目的は、失った財産を取り戻すことではなく、お酒につぎ込む日銭を稼ぐためだけである。そんあ人生の全てをお酒に振り回されているベンの前に、売春婦のサラが現れる。お互いに、後先を一切考えない今だけ見ている生き方に、共鳴し合い、絡み合っていく。ベンは、初めてその日限りの女として魅力を感じていたため、一緒に暮らしたいと懇願された時、明らかな嫌悪感を示す。しかし、サラの懸命な姿に心が折れ、あるひとつの条件だけ受け入れてもらうという前提で、同棲生活を始める。その条件とは、俺に絶対酒をやめろと言わないでくれである。一見幸せそうな同棲生活送る2人だが、そこには常にアルコールという闇を孕んでいることにお互いに気付かないふりをしながらも、否応なしトラブルが2人のもとに降りかかってくる。どんなにベンがアルコールに溺れている時でも、常に寄り添って献身なサポートをするが、ベンにとってはアルコールに取って代わる程には値しなかった。そんな姿を見かねて、病院に行くことを勧めてしまった。ベンにとって、その一言がもっとも重苦しいものでり、潮時と感じたベンは、サラの前から姿を消す。ある日の夜、サラの元に一本の電話が入った。それは、ベンからであった。モーテルで弱りきったベンを抱きしめ、静かな終わりに向けて、2人は、そっと身を寄せ合った。
ストーリーはシンプルだが、言葉にはできない2人だけの世界観に引きずり込まれること間違いなし。